REONALab.Blog

数学と芸術とプログラムについて日々思ったことを書いていきます、雑食。

「星へ落ちる」を読む。

2011年、金原ひとみ著の短編集小説。

 

早い投稿になりましたが、映画を見たのではなく小説を読んだ。このサイトは別に映画に限定してるわけではなく、書きたいことを(表現で他人を傷つけない程度)書くサイトなので、まあ雑食で書いていきたい。特に小説からは教養を得られるものがたくさんあると思っているので時間がある限り読んでいきたい。だからといって駄文なのは何も変わらないという……。前置きはこれぐらいで、本筋に入りたいと思う。

 

「彼」には同棲している男がいる。そんな「彼」を好きになった「私」と「彼」に「私」の影を感じて不安になる「僕」、そして「私」との復縁をのぞむ「俺」の視点から書く恋愛短編集。ぶっちゃけて言えば全員が恋人に依存しているメンヘラ気質な重い恋愛みたいなものだが、ここで「私」や「僕」は悪く言えない。なぜなら、まずこいつが悪い意味で「いい男」なのだ。二股に対しては私は寛容派で恋愛なんて個人の価値観だし、何をしようと法律に触れなければ大丈夫と思ってる(恋愛において)が、まあこの「彼」は典型的に恋人をだめにする人だと思う。魅力があるのだが、それを理解してない、そして人に対して優しい。こういう人は「優しい人」であって「良い人」ではない。自分が好きじゃなくなった人を綺麗に切り捨てるのも大事だとおもってる。そういうことができないなら二股とか無理だし、別れる相手が「死ぬ」と言ったら、話を応じるのはとても良くない。それは相手の思う壺なのだ。(一体私は何様なんだ)

まあそういうわけで、「彼」にはいい感情があまり浮かばなかった(僻みじゃない)がそれを差し引いても不気味なリアル感のある恋愛小説だなと思った。「私」は売れている美女作家、「僕」は超絶イケメンで稼ぎもいい、なのに「彼」を自分のものにしていないと二人ともくるってしまう。二人とも幸せを「彼」に依存しきってるのだ。いったい何処がそこまで魅力的なんだ?と思うのだが(あまり彼の描写や喋ることが多いわけではないので)冒頭で彼がしゃべっているセリフでこういうのがある。

 

「ずっと一つの星を見上げてると、自分がその星に落ちていきそうな気がしてこない?」

 

私はこういう人が好きなので非常に惚れ込んでしまう気持ちがわかってしまうところが辛い……w 30代ぐらいのいい大人でこの表現が出てくるところがこの人の魅力を感じた瞬間だった。一緒に夜に海にいってこれを言われたら私もズキュンときてしまうなあ…。まあ私のことはおいておいて、これに加えてイケメンで優しかったら惚れ込んでしまうかなあと思う。またそれとは別に「私」にも「僕」にも癖のあるところがあるし、いままで一切出てこない「俺」も中々面白いのだが、書くのに疲れてしまったのでここで終わりにしたい。ぜひ詳細を見てほしい小説だ。

 

追記

これ書いた後ほんの少し見直して、自分がなんとなく思っていたことがやっと具体的になった。「彼」は「私」と「僕」にとっての宗教だと感じた。例えば、上に挙げたセリフ以外「彼」はほとんど存在を小説中に出さない。セリフも「私」と「僕」を介して伝わってくる。その感じが私が思う宗教的な愛がそこにあったと感じた。何より自分の幸せを「彼」に依存しているのが特にそう思えたからだ。「俺」は「私」を崇拝するかのように待っていた。「私」が帰ってくることを祈りながら夜を過ごしたり、「私」に対する毎日のメールや電話の数は気持ちが悪いほどだった。そういう意味で敬虔な様を醸し出している。

私は宗教的背景とかそういうのをしたいわけでは一切なく、むしろ人への愛というのはここまでアイデンティティーになるのかということである。はたから見ると滑稽さがある。けれどこの人たちにとっては本気なのだ、どうしようもないほど。そういう意味で最高な愛と思う。猜疑心はあるかもしれないが、目指す先は『髪結いの亭主』と同じ方向だったのかもしれない。それが「彼」によって裏切りがあったため「私」と「僕」は壊れていったのだ。やっと腑に落ちた。よかったよかった。

追記終わり。

 

金原ひとみさんは「蛇にピアス」の代表作で知られていると思うが、これも面白いと思う。個人的には色メガネで見たくないので代表作はあまり見ない主義なのだが、他数冊読んでみて面白かったら代表作を読んでみたい。ただ、金原ひとみさんは結構好きな表現もするのだが、物足りなさを感じる。なんか冷めてるというかなんというか。そこが不気味に感じてしまうのだが、同じ不気味でも生々しくておぞましい不気味さ、人の生の心にふれあいまくる感じが好きなんだよなあと。まあ現代的な人の心の不気味さだと思う。どっちがいいとかはないと思ってるので金原ひとみさんが書きたいことを書いてくれた方が私としては嬉しい。(だから何様なんだ、この駄文野郎)

 

私は色んな星を旅して、本当の気持ちを知りに行きたい。

Fly me to the moon.

それでは駄文失礼しました。